士官学校進路選択: 運命を決める夜

アメリカ海軍ミサイル駆逐艦上甲板

 アメリカの士官学校では11月頃に卒業後の進路を選定する。サービス・セレクションという。まず大まかな分野を選択し、その後各部署の募集人員に応じて好きな進路を選べる。もし成績が上位であれば、の話。
 この成績には学業軍事関係教科&訓練結果と運動能力体力テスト結果から必修の部活及び課外活動での評価が含まれる。昔はほとんど学業だけが選考基準だったが、弊害が出たのか不満が噴出したのか、多少変わった。ウエストポイント陸軍士官学校で言うと、学業55%軍事30%体力10%その他5%だ。学業成績は専攻が難しいかどうかはまったく考慮されないので、ぶっちゃけ簡単な専攻でオールAの人間が、難関の専攻で一回間違えてAマイナスだった可哀相な奴を押しのけて最後のグリーンベレー養成部隊枠*を取っちゃったりする無慈悲なシステムである。自分の目の前で志望枠がなくなるくらい情けない瞬間はない。どうしよう第二志望考えてなかった、などとなるとその場で人生を変える決断を迫られる。まあレンジャー部隊に入るにはこの進路選択以前に適性があるかどうか合宿(とは言わんが)訓練して可否が通達されるから成績だけがいいヘタレが選べる枠ではないけどね。

*本当はデルタフォースやグリーンベレーやレンジャー部隊を「選ぶ」事は出来ません。実戦部隊(特殊部隊)を希望職種として選んでのち4ヶ月以上(2010年より2コース統合)の指揮官基礎コースを終え、どこかに配属され、少なくとも2年位お勤めし、中尉から問題なく大尉に昇進出来そうな時点で希望を出し、適性があると認められてやっと選考してもらえます。しかも士官だと書類仕事やらされて、現地でアクション映画やゲームみたいな真似は出来ないらしい。でもさ、最後の歩兵部隊枠っていうのも地味じゃん?

ウエストポイント陸軍士官学校の場合

ウエストポイントでは将来の職種を選ぶ儀式をブランチ・ナイトという。この場合のブランチは優雅な遅い朝食ではなく兵科の事である。以前は成績順に一人づつ好きな兵科を選んでいった。各科の募集人員には制限があるので、成績が悪ければ自分の順番が来た時に第1志望枠が残っていないことも。だが90%の人間は少なくとも第2志望、かなり下でも第3志望先には入る事が出来た。最近の数年は方式が変わり、全員で行進しアイゼンハワーホールの劇場に集まって号令一下茶封筒を開くと中に将来働く事になる兵科の徽章のついた紙が入っているという一斉主義。時間は節約出来るが手に汗にぎる展開はない。

陸軍士官学校の候補生が兵科の徽章をつける陸軍士官学校のカデットが配属兵科の徽章を
着けてもらっているところ

だから正確にはもう自らのセレクションでなく上からの割当に変更されたわけだ。2011年度では第1志望が通った候補生は78%。第3志望すら通らんかったのが5%。お可哀相に。まあ、理由はいろいろあろう。何しろ上の方が定年その他で辞めなきゃ枠は空かない。しかもこれから人員(特に士官)の大幅削減期**に入るという噂。

しかしまだ奥の手がある。義務期間を3年上乗せすれば、第1志望兵科に入れてもらえるのだ。2006年度に義務期間延長で入ったのが60人。これは士気と労働意欲を高めるには満足感がなければならないという当然の理由から。長くいれば軍に骨埋めてくれる確率が高くなるしね。でも、実際やってみるまで志望職種が自分に合っているかどうかは判らないもの。ちなみに陸軍士官学校での人気兵科は歩兵(戦闘部門)・機甲・航空・工兵。圧倒的に数が多いのは歩兵科で6−7割。

ウエストポイント米国陸軍士官学校の訓練風景陸軍士官学校で体験レッスン中

 士官学校では夏休み中戦闘関連の職業訓練を散々やらされ、学期中は非戦闘部門がスカウトを送り込み、各分野の現職がどんだけその兵科が素晴らしい未来を提供するかガンガン宣伝に来る。だから説明を聞いたり実際にちょろっと仕事をかいま見たりある程度任される事もあるのだが、見学や無料体験レッスンと現場は違うものだ。だから最初からえり好みせず、何を与えられてもベストを尽くそう。その仕事が好きになりもう一度機会を与えられても同じ職を目指すだろうという士官も結構多い。どうせ数年辞められないんだから、胃を救いたければポジティブに過ごすことだ。

** 海軍は新卒の実務向け訓練期間中に人員を今以上に刎ね、陸軍では予備役に大目に回し、空軍士官学校では2年次の最後の時点で見込みのない奴を今より余計に切るシステムになるらしい。そのかわり空軍士官学校ではビリでも何でもCGPA2.2以上(C+かB-?)で卒業すればパイロットだろうとなんだろうと好きな職を選べるらしい。海軍の場合既に少尉なわけだが、実務経験がないまま民間に放り出されてどうなるというのか。あ、どの大学もそれは同じか。切るならクオータの中でも出来の悪い奴にしてね。ROTCやOCSは真っ先に削減予定。予備役に回される覚悟で臨んで下さい。

アナポリス海軍兵学校の場合

海軍兵学校では希望分野を9月(最上級生になってすぐ)に第6志望まで選んで申請する。そのどこかに必ず水上艦勤務を入れておかなければならないあからさまなシステム。志望出来るのは以下の分野。無制限資格(戦闘指揮職):海軍航空隊、海軍機上要員、海兵隊(航空/地上)、潜水艦、水上艦(一般/原子力)特殊作戦部隊(爆発物処理/潜水等)、特殊戦(シールズ)。制限資格(肉体的基準に満たない、あるいは満ち足り過ぎている= 背が高いorデブ等):諜報、整備、情報戦(旧暗号解読)、技術管理、気象海洋学、補給、土木、法律、医官など。肉体的な問題のない男子は全員無制限資格の戦闘職を選ばねばならない。例外は医官と原子炉(機関)技師。11月末もしくは12月初旬に成績順に結果を知らされる***。

候補生はバスでまとめて基地などの面接会場に送り込まれ、本職の皆さんが適性その他をチェック。進路に特殊戦や特殊作戦、パイロット、潜水艦を選んだ場合、個人情報とやる気度を示す全ての資料を提出。潜水艦/原子力艦希望だとその場で微分や物理や化学の計算させられ、その後短時間だが海軍大将と面接。この原子力推進艦希望者は現在3年生の夏と秋に面接の機会がある。夏に決まれば早期契約ボーナスが出る。秋でも即日契約でちょっと少なめの契約金が。この人らは11月のセレクションなんぞてんで関係ない。

F/A18

かつてはセレクション以前に結果が出ていた唯一の分野は原子力推進の艦艇(潜水艦含む)だけだった。だが今は。2010年から特殊戦/特殊作戦も早期に結果が出るようになった。医官になりたい人は全然違う基準だし募集枠めちゃ少ないし、なれそうならもう卒業後の医学校の行き先が決まっていたりする。水上艦希望は必ず通るし、11月の選考日にまだ決まってないの航空関係と海兵隊だけじゃん。だが海兵隊希望者も中隊に派遣されてる海兵隊代表者とまともに意思の疎通が出来ていれば受かるかどうか分るし、それほど狭き門じゃない。なんだよ、パイロットになれるかどうかの日なの?んじゃ昔とおんなじじゃん。

ネイビーシールズ地獄の特訓中中隊お守役の士官が手渡す運命のファイル
段ボール箱から出すところが有難味ゼロ
後ろは簡易台所 TVDVDCDWii等は続き部屋に

 *** ここ数年大人の横槍がキツくなった。つまり、成績上位の連中が適性のない分野を選んだり人気分野を独占しないよう、また成績下位(専攻が難しかった連中含む)の人間が好きな分野を目指せず労働意欲に欠けたあげく辞めたりしないよう、ある程度の介入をするようになったらしい。
なので豪華な広間で各部署の募集数の決まっているなか席順で一人づつ選ぶというスリリングな方式ではなく、中隊の士官室(娯楽室)や会議室で運命の青ファイルとご対面、などというミルクトーストなやり方となった。表紙をめくるまで第一志望が通ったかどうかは判らない。もし「第一第二志望のどっちでもいい」などと過去に迂闊に口を滑らせていたりすると、「何が何でも飛行隊志望」と頑張った成績下位の同期に横から攫われるかもしれない。そんなこと言う間抜けはいないと思うが。

 が、逆にいえばわざと英語を専攻にせずとも艦船設計でも機械工学でも安心して好きな勉強をしてそれなりの成績で終わってもチャンスはあるということだ。それに誰か卒業し損ねたり家庭や心身の問題で志望を変える事もあるから最後まで諦めてはいけない。だがどうしてもダメだったら忘れるまで飲んで終りにしよう。事故るのは航空機関係と決まってるんだから。

ネイビーシールズになりたい場合

ネイビーシールズネイビーシールズin砂漠 人気の理由判明

シールズはたとえ面接に受かっても卒業後BUD/S(地獄の訓練?)に合格しないとなれない上、士官学校出の場合一回しかチャンスがない。兵卒だと3回BUD/S受けられるとかいう噂。もっとも合格率はアナポリス海軍兵学校出が90%程。なぜかというともう既に「選ばれた」人材だから。兵卒は75%くらい落伍する。4人に一人しか受からない。自分で勝手に希望した人達だからね。
士官学校からBUD/Sに行くと指揮官を選ぶ基準になるので、自分の成績がいいだけじゃなくまわりを助けて指導的立場を取れるかどうかまで要求される。そもそも指揮官は数が少なくていいので狭き門。あげく現地での作戦活動は最初のうちだけで、すぐ計画の方に回されてアクション三昧は出来なくなる。だから大卒でも士官ではなく兵卒枠で入ろうとする人間が出てくる。スタンフォード卒とか。まあアクション中にあとどのくらい空気が保つかとか水圧がとか計算もしなくてはならないので兵卒といえどおバカではなれないからいいのだが。

ネイビーシールズ地獄の特訓中ネイビーシールズin海 地獄の選抜特訓中 

シールズも昔は最初に書いた陸軍レンジャー部隊と同じく、他の分野で経験を積んだ後訓練への参加をを申請する形だった。ちゃんとまともに役に立つ人間かどうか試してからでも遅くはないと思うのだが。そういえばまだ軍に入ってすらいない兵卒(予定)の兄ちゃんも「今年シールズに入る」と、もう決まった口調で言ってたのを思い出した。(追記:問い質したら特殊戦じゃなくて特殊作戦(潜水)の訓練を受けてる最中で決定じゃなかった。だが説明が面倒なのでシールズといいたかった気持ちは分る)もしやウエストポイントも去年からそうなのだろうか。マット君が「レンジャーになりたかったけど逃したからハワイ行く」みたいなことを言ってたしなあ。ころころシステム変えるのヤメれ。記事が長くなり過ぎる。

最近は特殊戦/原潜以外個人面接なし。中隊にいる各分野の代表者が選考委員会に上申する形式。なので第一志望を確実に狙うには成績だけでなく戦略が必要。例えば飛行隊希望なのに第二志望が航空要員じゃない場合、本気度を疑われる。第2志望が潜水艦だったりなんかしたら職務も生活様式もまったく違うのにこいつ何考えてんの、となりかねない。そこで海兵隊航空隊と書けば真剣そうに見える。誰かに「君は2つの分野から望まれているよ」などと言われたら第一は諦めろ、という意味。
もしどーしても飛行機に乗りたいなら水上艦でしばらくお勤め後に転属可能な契約もある。が当然義務期間は延びる。逆にどうしても海兵隊員になりたくても、航空隊と地上部隊を両方選ぶ事は出来ないらしい。面倒くせーな。なんにしろパイロットは体格制限条件と健康診断と視力試験をクリアしなければならない。ダメならおしまい。もしかしたら、ということはない。
どーしても水上艦がいやだと?!んじゃ最初の2つは本物の志望を、次に医官やシールズや原子炉技師など無理ゲーな所を挟んで最後に水上艦書いとけ。何しに海軍に来たんだよ(怒)

選択のあとのご託宣

アナポリス米国海軍兵学校の職域選択希望職を手に出来たかな?海兵隊とシールズは部屋から出るなり一年生に押さえ込まれて剃られます。男はね。

2012年度のアナポリス海軍兵学校最上級生1108人が将来の進路として選んだのは水上艦283人、航空隊(パイロット)255人、NFO(飛行士官)89人、海兵隊272人(地上199人)、潜水艦140人、特殊作戦部隊16人、特殊戦28人、医官(医学生)10名、他。たまに各軍種間任官で空軍行ったり沿岸警備隊に行く者も。これが決まった後は毎週金曜日に将来の職種に合わせた制服を着用する事が出来る。いつもと違っていろんな服装の生徒が歩き回ってて、遠目だと士官と候補生の区別がつかない。まあ禿げてれば生徒じゃないとマイル先からでも知れる。いや待て、海兵隊に入れたら丸刈り、シールズになれたら丸刈りのうえ剃り眉だった。ご新造さんじゃあるまいし。お歯黒はしないんで?あ、虎刈り状態の頭に悪戯書きされるか、マジックで黒々と。
ともあれ本人達はいつもと違う楽な服装で歩けて幸せかもしれないが統一感はない。士官学校版カジュアル・フライデイです。

女性士官の過去と未来

陸軍兵士

女性は2013年1月に規制が撤回されるまで多くの戦闘職(危険職)に就けなかった。だから士官候補生のセレクションといっても補給部隊か管理職が主。例えばパイロット枠も数人のみ、しかも航空教導隊勤務。海兵隊も地上部隊勤務で航空隊不可。潜水艦不可。特殊部隊不可。戦闘艦不可。
そのかわり、男子は身体的に問題のない場合、制限資格職である諜報などを希望出来なかった。(海兵隊や水上艦に属した諜報任務に付く事は可能)女子は体力抜群でも諜報OK。という次第で女性の管理職、特にペンタゴン詰は少なくない。年々この基本が緩んでいき、90年以降は加速度的に女性の職域が増えた。そして2008年ISSコマンダーに女性、2009年に女性潜水艦乗員誕生。現在88%の職域が女性に開放されている。今年以降はついに平等となるかも知れない。女性の代表と見なされ過度に注目され、決して失敗すまいと頑張っていた少数の先人もこれでやっと息をつける。
だが可能だからではなく、自分が本当にやりたい仕事を目指して欲しい。そして軍も適材適所を徹底してもらいたい。90年代半ばの戦闘機パイロット問題(いわゆるクオータ=割当で能力があろうとなかろうと女性や少数民族を各部門に配属するやり方が仇となったケース。危な過ぎて一緒に組みたくないと公言される女性パイロットが出現し逆効果)の再現にならず両性にとってよい結果を生むよう祈る。敵同士ではなく、同じ国の未来を守る士官なのだから。安心して命を預けられるかどうかに性別や人種は関係ない。生きるか死ぬかの世界では。

未来の乗艦を決める運命の夜

で、海軍の中核である水上艦を将来の職場に選んだ候補生は2月(今年は1月31日)に実際どの艦艇に勤務するかを決定する。乗艦を自分で選び取る伝統行事、シップ・セレクション・ナイトだ。ドラフト逆指名。これでこそ満足出来るというもの。

運良く第一志望の水上艦勤務を選べた有能なる候補生諸君並びに惜しくも他の分野にあぶれ仕方なく水上艦を目指す連中が、成績順に壇上に登り艦名を選んでご披露する、いわばお披露目式をシップ・セレクション・ナイトという。乗艦選定式。ごめん日本語不得意。あと3日するともっと正式名称っぽいの思い付くから我慢して下さい。

アナポリス米国海軍兵学校の乗艦選定式の舞台

艦隊勤務を希望した4年生(ファーストクラス)が壇上で将来の職場となる好きな艦船を乗艦として選ぶ。パネルに沢山フネの名前が引っ付いている。ポジションが空いてるフネの名前なので同じものが複数あることも。母港別に整理されているので、実家の近所でもエキゾチックな外国暮らしでも好きに選べる。母港が国内でも常駐先が海外というのも珍しい事ではない。演習や整備で思いもかけなかった地域に滞在する機会もある。海軍でよかったね。世界を股に掛けるだけが特典ではない。第三世界に触れて世の中の厳しさに目覚めるのは早い方がいい。横須賀の発音がよくぅーすかーじゃなくてヨコスカだと知るのも早い方がいい。知らないまま帰る奴多いけど。それでも箱根をハック・ワン(Hak-one)と読むよりゃいいか。何言ってんのか理解するのに数十秒かかったぞ。ここまで乖離すればもはや天晴。

アナポリス米国海軍兵学校の乗艦選定式のパネル

アナポリス米国海軍兵学校の記念講堂と喫煙室上階が記念講堂、下が喫煙の間(禁煙)

かつては上記の職域選択、サービスセレクションがなんとこの乗艦選定式と同じ日であった。メモリアル・ホールで希望分野を成績順に選び、下の階で乗艦を選ぶという忙しくも手に汗にぎる展開。船乗りにとってはまさに運命の夜。日頃から極限状態でも冷静でいられるよう訓練して来た甲斐があったというもの。
これが潜水艦隊志望だと事前にDC(ペンタゴン)に行って例のジジイアドミラル・リックオーバー。原潜の父。米海軍潜水艦に乗る士官を一人残らず面接し、その比類なき権力でもって士官学校首席卒業だろうがなんだろうが好き勝手に採用不採用を決めていた。理由は当然非公開で、誰にも理解出来ない事も多かった。(アドミラル・リックオーバー)にインタビューされてなければならず、まったく別の運命を辿る羽目になる。パイロット志望は席次順に並んで自分の番が来たら航空隊のテーブルに行き、まだスロットが空いていれば握手してフライトスクールの日時を選んでその日は終り、だった。だからこの職業選択の日が切実に運命と関係あったのは海の男の艦隊勤務希望者のみ。

アメリカ海軍兵学校(アナポリス)ではこの乗艦選択の模様をラジオ中継するのが伝統だったが、今年はインターネット中継で部外者も様子を見ることが出来るようになった。単に今何人めが何を選んでるか自室にいて分るので、成績下の方から数えた方が早い奴がずーっとその場に詰めてなくてもいいってだけの中継(おっとぉ、サンディエゴの船はこれで打ち止めだぁ!壇上の候補生XX、考え込んだー。どうするどうする?!選べるのはひとつだぞ!)で、他人が見聞きして面白いようなもんじゃない。

昔は儀式の場が格調高いバンクロフトホールだったが今回なぜかマハン劇場より。古色蒼然で狭いので、全校生徒どころか1学年全部詰め込むのも厳しいが、劇場だから席は用意せずともそこにある。誰か楽したな。今年はみんなやたらと選ぶの早くて、BMD(バリスティック・ミサイル・ディフェンス)がバズワードだった。弾道ミサイル関連で危険そうな国や、さっさと撃ち込んで終りに出来たらどんなに楽かという国があるしねいろいろ。

BMD駆逐艦たーまやぁ〜♪

人気艦船はいつも基本小さめの戦闘艦、つまり最新鋭駆逐艦。空母や強襲揚陸艦や補給船には誰も行きたがらない。ついでにいえば昔人気だった潜水艦も今はそれほどでもない。成績のいいやつをドラフト指名で無理矢理送り込むくらいである。だってソ連の頃は極地の氷割ってドドーンとサブが現れたらそこは国境を接する最前線。けれど今どこに浮上したってタリバンなんかいない。緊張感に欠ける。一時は世界最強の潜水艦隊を誇ったロシア相手だからこそカッコ良かったので、今やカッコいいのは砂漠を駆け巡る特殊部隊。泳げなくても大丈夫。

爆発物処理係爆発物処理GET〜♫

それにこれからは(決まったのが今年で調整終わって実施は2016年度より)女子もバリバリの戦闘艦に勤務出来るようになった。昔も駆逐艦母艦などに数人は入れたが、どれもほとんど本国の港を出ないような艦に限られていた。今は駆逐艦でも潜水艦でも選べる。今年は女性13人が潜水艦乗員に。女の子がみんな嬉しそうだったのはそれでかな?競争倍率が高まるなあ。

さて、中継が映像付きなので金髪のお姉ちゃんがインタビュアー。アドミラルが後から後からインタビューされます。伝統行事なんで偉い人(=卒業生)が沢山来てるわけです。ところがこの姉ちゃん、怖いもの知らずなのか急な勤務命令でデートの約束がポシャった腹いせか知らんが妙にふてぶてしい。一緒にいるだけで緊張する士官もいるという海軍大将閣下、現在全海軍に10人しかいない星4つの雲上人に向かい、あろう事か「中将…じゃなくて大将か。予算減ったのどうやって考えます?(←文法が微妙)わかるーあたしも大将に賛成だよ!」と来た。お前がどう思おうが知った事か。その直後アナポリスの校長(中将)に向かい「あたしぃ、エンリステッド(兵卒)で士官とか将校なんて関係ない人生送ってんですけどぉ、なんでこんな行事気にしなきゃなんないんですかぁ?」と畳み込んだ。


校長一瞬あんぐり開けた口でしかしすぐに「彼らが君の上官となるかもしれないのだよ、多少の注意は払っても構わないのじゃないのかね」と言ったあたりで政治的配慮を思い出し「もちろん新任士官は君らや兵曹長の経験に支えられて士官としての職務を全う出来るわけだが云々」と取りなしたがねーちゃんは怯まない。たった今艦船名を高々と挙げて選択を終えた候補生を捕まえて「ねえ、なんでパイロットに志願しなかったんですかぁ?」口調が明らかに(アンタ成績悪くて水上艦しか行き先なかったんでしょ)と言わんばかり。
聞かれた士官候補生、慌てず騒がずさりげなく「水上艦はいろいろな職務があって将来の進路が多いから出世もしやすいもん♪」とかわしていたのがさすがに女同士、嫌み慣れしている。

アナポリス米国海軍兵学校の乗艦選定式の候補生普通の成績ならこのくらい艦艇が残っている

もちろん言い訳ではなく本当の話である。大体海軍の中心的存在はフネなのだから当たり前だ。成績が良い順に潜水艦乗員やトップガンになるわけではない。成績順に好きな進路を選ぶのだ。まったく失礼しちゃうわね。パイロットならともかくNFO(航空要員)なんかになるくらいなら水上艦から作戦本部長になってみせるわ!鶏口となるも牛後となるなかれ。いやそうじゃなくて。

元々海が好きな人間が多い海軍。潜ったり飛んだりするより潮の香を嗅いでいたいのは当然。成績が1番でも2番でも水上艦を目指す候補生は大勢いる。ずっと海軍にいるなら士官学校出の水上艦畑が先に海将になれる確率が高いし、すぐ辞めるつもりなら潰しがきく操縦士免状持って民間エアラインに行けるパイロットになればいい。でもそれだけでなく、心身ともに適性検査するからね、潜水艦とパイロット。たまにいるんだ、上下左右を入れ替えたスライド写真に映った物体の位置関係や状況がどうしても掴めない奴が。

アナポリス米国海軍兵学校の乗艦選定式の女子候補生残り物には福がある・・か・・。

それについ最近水泳大会*で偶然出会ったアナポリス卒業生。潜水艦勤務だったが健康上の理由で水上艦に鞍替えしたのだが、左遷とは露ほども考えてなく、かえって職域が広がり出世も楽と嬉しそうだった。考えることは同じなのだろう。空母勤務になるそうだが、その後も同じ意見であるかどうかは甚だ怪しい。まだ若いから、シルバーブレット(有能な士官が3年間空母勤務で我慢すればその後何でも希望の職に就ける特権。書評記事参照)でも貰ったのかもしれない。潜水艦は本当に月月火水木金金の世界なので、とても違う経験をすることになるだろう。日の当たる場所に出てこれてよかったね。きれいな日焼けはアメリカじゃセレブ(日本的な意味で)のシンボルだもんね。潮焼けがその条件を満たすかどうかは判らんが。

 *最近といっても何かの病原菌のせいで100人を超す阿鼻叫喚のゲロ祭りと化したあのアナポリスのプールでの大会ではありません。また病原体は海軍兵学校由来ではありませんとの士官学校自前公式発表ですので皆様どうぞご安心ください。

アナポリス米国海軍兵学校で物議をかもした写真ヒール高過ぎと物議をかもした写真 規則違反より実用面で女性の反感を買った。で、これ乗艦選択で残り滓攫ってたのともしか同一人物?
筋が通り過ぎてるだろ…

昔は結果を家族に知らせたりするのに公衆電話のあるとこまで行かなきゃなんなかったけど、今は携帯だから楽。たまにその場の気分で予定を変えて自分が一番知らない場所(昔ならフィリピン、今ならバーレーンとか)を選んで同期や家族に絶句される刹那的な候補生も。何しろアメリカ人の地理音痴というか他の国への興味のなさは想像を絶する。
日本から来たと言ったら「あら、素敵。私一度ヨーロッパに行ってみたかったの」だの「本土(中国大陸の事らしい)へ渡る橋って長いの?」だの「ロシアの上?」と聞かれる。ロシアの上ってどこだよ、カナダか?そしてそのカナダがどこにあるか知らないアメリカ人が存在する。バーレーンなんて果たして地球上の場所かどうかすら皆目見当もつかない両親がいる。母親に泣かれるかもしれない。後ろに電話の順番待ちが出来てるのに止めてくれ。携帯だって貴重な分数を浪費するのはキツい。
だがそういう候補生もいないと盛り上がりに欠けるので、選択肢が減りヤケクソになった最後の方が乗艦選定は面白い(当校比較)。でも今の子はちゃんと予習してばっちり決まってるんだろうな、どこ行きたいか第5候補まで。


実況中継の事を忘れていた。なぜか最後に金髪ねーちゃんともう一人の口調も態度も丁寧な美人のお姉さんインタビュアーと〆の会話。「あー興奮しちゃったわねー(明らかに演技)あたしの初めての夜♡シップセレクションナ・イ・ト♡(ドヤ顔決めポーズ)アンタもよね、え、2回め?フン、生でヤるのはあんただって初めてでしょ。ホントよかったわあ(激しく演技)次もまた生でやれるといいわねー。ねっ?」と押し切られ口を挟む暇がなかった美人のお姉さんの笑顔がとてもぎこちなかった。このぶんでは来年度のネット中継があるかどうか不明。アカデミー賞みたいに放映にタイムラグ付けて不謹慎発言の削除をするほどのヤル気もないだろうしなー。ま、どうせ外部の人間は誰も見てないだろうから気にしない。こんなんで誰か引責でババ引いたら哀れ過ぎる。


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